埋もれていた手技療法の統一原理3

筋紡錘の秘密

筋肉操縦法の脱力の仕方への返事

ニフティのパソコン通信の中に、漢方の部屋というフォーラムがあります。その中の「漢方の周辺」という会議室があり、私はそこに投稿していました。このHPの「あるじの部屋」の文章は、大部分が、そこで私が投稿した記事がもとになっています。

その会議室でgooponさんという同じ均整師の方と「筋肉操縦法の脱力の仕方」について(#964,966,971)意見を交換しました。交換といっても、彼のいっている理論が正しいのか間違っているのか、さっぱりわからないので、交換にもなりません。

まるで、超現実主義の絵を見ているようです。高い建物から水が下に流れていて、その流れをどんどんたどって行くと、下に下っていた水が、いつの間にか建物の上の元の場所に戻っている、という絵です。確かに水は下に流れているのに、たどって行くと、いつの間にか上になっている。どこで間違ったのか分からない。

この絵は、こんなことは現実にあり得ないので、明らかにこちらが錯覚していると分かるのですが、gooponさんの主張は現実と一致します。何となく間違っているような気がするのですが、彼の主張をたどって行くと、やっぱり正しいのかな、と思ってしまいます。反論しようにも筋肉についての深い医学的知識がない私には、難攻不落の城のように建ちふさがっていて反論をゆるしてはくれません。

泥縄式に筋肉の周辺の知識を勉強しても、医学用語が難解で、さらにこの反射に関する部分は、いろいろな概念がまるで網の目のように関連しているので、読み進んでいるうちに、頭の中がごちゃごちゃになり、何が何だか分からなくなってしまいました。

そのようなわけで、回答を延期しているうちに、早1年半の歳月がたってしまいまして。一時はやめてしまおうか、と思ったのですが、直観では何か大事なものがここに潜んでいる気がしていたので、均整法誕生50周年祝う松山での全国講習会に間に合わせるべく、もう一度チャレンジしてみました。これは1年半越しの#971のコメントに対する回答です。

本来はニフティの方に投稿すべきものですが、パソコン通信では画像が使えません。今回の回答には多量に画像を使わなければならないので、私のHPを使わざるを得ませんでした。ご了解ください。


gooponさん長らくお待たせしました。以下は私がgooponさんのコメントを読んで考えたことです。なお、赤字の部分はgooponさんのコメント、青字の部分は書物やインターネットの〜の引用、黒字の部分は私の書いた(叩いた)ものです。少しおちゃらけて書いてますが、言葉が難解なので、文を修飾する余裕がないのです。私の思考のまま書いてます(普段はこんなもんだ、恥ずかしいね)。パソ通でのこの前のコメントを読んでおられない方は、赤字の部分だけ読むと、gooponさんの主張がわかります。

971/971 VYL05551 Goopon RE:筋肉操縦法の脱力の仕方 (10) 99/10/30 04:06 965へのコメント

ビーバーさん。こんにちは。以下、長文で申しわけありません。筋肉操縦法について、また考えてみました。とりあえずの結論としては:

1.他動的にゆっくり引き伸ばし、吸気の頂点で耐えられるだけ耐えさせて「パッと脱力」した方が、「ゆっくり脱力」するよりも弛緩作用が強い

2.1の操法よりも等尺性収縮の方が弛緩作用が強い

3.2の操法よりも等張性収縮の方が弛緩作用が強い

と言えそうです。但し、状況によって最適な操法は異なります。1は当初の疑問を抱いたときとは反対で均整法の操法通りになっています。

過去の発言と重複しますが、もう一度基本的な知識を整理させていただきます。

骨格筋の筋線維は錘外筋線維と錘内筋線維に分けられます。

何だ、なんだ、等尺性収縮、等張性収縮、錐外筋、錐内筋て。

等尺性収縮

自ら収縮する筋肉に対し、他動的に抵抗を加えてその筋長を変化させないようにした収縮

筋の両端を固定して刺激すると、収縮中筋の長さは変化しない、そのような収縮。筋の一端に張力記録装置をつければ、張力変化を記録することができる。すなわち等尺性収縮では短縮曲線は得られず、張力曲線が得られる。(医学大事典)

相手が縮めようとするのに、こっちが抵抗をくわえて縮めないようにさせるわけだ。相手とおなじ力が必要だね。相手がどんどん力を出して縮めれば、こっちも力を出すから、その力を計ればどんどん上がっていくわけか。それを張力曲線というのだね。ようするに、筋肉の長さを変えないように力を加えて収縮させるわけだ。腕相撲したら両者は同じ位置で力を加えて行くのだね。または、綱引きで腕を伸ばしたまま綱を引く状態?。

等張性収縮

等張性収縮:自ら収縮する筋肉に対し、その収縮力より弱い抵抗力を他動的に加えた状態で筋長が短くなる収縮

筋の一端を固定し、他端に一定の重り(負荷)をかけて刺激すると、収縮中筋は負荷を引き上げることによって収縮する。等張力というのは収縮中筋の張力が負荷に等しい一定の値になっているからである。(医学大事典)

筋肉を縮める力を一定にして長さを変えるわけだね。腕相撲では負けている状態?。

錘内筋線維

γ運動の線維の活動によって収縮する筋線維で、筋紡錘(筋伸張受容器)の中に存在し、収縮活動により、筋紡錘の感度を調節する役目をもつ。( 医学大事典)

錘外筋線維

一方、α運動神経で支配されている筋線維(大部分)を錘外筋線維 extrafusal f1ber という。(図解生理学)

なーんだ、錐外筋というのはただの筋肉、錐内筋というのは筋紡錘のことか。

錐外筋  ただの筋肉(いい加減だねー)

錐内筋  筋紡錘(筋肉の中にある張力検出器、センサーの一種だね)

それにしても、医学用語は難しい。医者というのは一般人にわからない言葉を使って「おまえたちより私たちの方が偉いんだと」優越感に浸っている人種じゃなかろうか。それにこんなに言葉が難しいと使っている本人たちもわからなくなるんじゃないかな。まーいいか。

錘外筋線維は骨格に付着しているので収縮すると力を発生します。この錘外筋線維の両端には直列に腱器官(腱紡錘)が位置しています。

筋肉の端の腱の一部には腱紡錘という、これも筋肉の緊張度をモニターするセンサーがある、ということね、これは了解。

一方、錘内筋線維は錘外筋線維と並行し、骨格筋の感覚器として作用していますが、両端が実質的には自由端なので収縮しても力を発生しません。

なんでよ。これには図が必要だね。

第1図(図解生理学・医学書院より)

なるほど自由端というのは、浮いている、ということか。骨についてないから力を発揮できないわけね。そして、筋肉の張力(張り具合)の計測装置だから、筋肉本来の働きはしないということだな。

筋肉の収縮と弛緩に関係する神経については、代表的なものとして求心性の1aと1b、遠心性のγとαに注目します。以下、「錘内」と「錘外」に注意して読み進めてください。(神経を1a、1bと表記しましたが、通常、1の部分はローマ数字の氓ナ書き表されます。しかし、これらは機種依存文字のため、Mac→Winでは「氤。「」に、Win→Macでは「TUVW」になってしまいますので、あえて共通の1〜4に変えました。気になるようでしたら、ダウンロード後、検索→置換えの機能であらかじめ変換した方が良いでしょう。)

これは文章じゃわかりにくいから、これにも図が必要だな。

 

第2図

なるほどね。こうなっているのか。少し気になるのは筋紡錘の下の端が腱にくっついているところだね。第1図では筋紡錘は腱にはついていない。これは参考にした図があまりにも小さいので、私がイラストレータで大きく書き直したものだ。この元図はコピーのコピー、そのまた孫の孫、あたりからとっているので、元は医学書なのだが版元がわからない。でも、医学書でこうなっているのだから、間違ってないと思う。それに、この部分はあまり重要ではないと思う。

αは錘外筋線維へ収縮/弛緩命令を伝達します。

α細胞からはα神経線維が出ているが、これが筋肉に収縮の命令を出すのだな。だけど弛緩命令というのはなんだ。筋肉は収縮しかしないではないか。つまり自らは伸びない。すると、弛緩命令というのは、信号が流れない、すなわち0の状態なのだろう。それはα細胞が興奮していないということじゃないのかな。

では、収縮した筋肉はどうしたら伸びれるの。それには拮抗筋が収縮して、対抗する筋肉を伸ばしているのだろう。てなわけで、ここでは、弛緩命令とは、信号が流れない、入力「0」として理解しておこう。

1aは錘内筋線維の中央に終末していて筋肉が伸びていく時の「長さの変化」(錘外筋繊維と錘内繊維の長さの差)とその「速度」に反応し、長さが短くなる時には反応しません。

『(錘外筋繊維と錘内繊維の長さの差)』てなんだ。筋肉の長さと筋紡錘の長さの差?、こんなの比較してどんな意味があるのだろう。言いたかったことの意味は、次のようなことかな。

第3図(図解生理学)

第3図上段では筋紡錘は筋肉が収縮すると、筋紡錘も縮んでしまって、長さを感じられなくなっている(上段右では放電をやめてしまっている)。左では筋肉が伸びると放電をしてる。このことをいっているのかな。もっともγがからんでくると、さらに筋紡錘も縮むのだけれど、これをいっているとややっこしくなるので後回し(後回し1)。でも、「錘外筋繊維と錘内繊維の長さの差」を感じるにはそうしないとできないのだから、たぶんそのことをいっていると思うのだけれど。

1aの反応は直接その筋肉のαに興奮命令を出すので、その筋肉を収縮させようとします。

もう少し詳しくいうと、1aに電流が流れると、α細胞が興奮し、その結果α線維に信号が流れ、その信号が筋肉を収縮させる、ということだな。

1bは腱器官に終末していて「筋張力」に反応し、脊髄神経を介してその筋肉のαに抑制命令を出すので、その筋肉を弛緩させようとします。

少し戻って、第3図の下段をみてみると下段は腱紡錘の図だ。筋肉はウエイトをかけられて引っ張られているが、引っ張られ伸びているときでも放電して(左)、筋肉に命令がきて(電流を流してる)緊張している時にも放電している。「「筋張力」に反応し」というのは、このようなことかな。でもな、筋の張力に反応するということは、1a(筋紡錘)だって広く考えれば筋の張力に反応しているのだけれどね。張力への反応の仕方が違うのだろうな。腱紡錘の方が強い張力になると反応をはじめるというのが正確ではないかな。

だが、問題は

脊髄神経を介して』てどういうことかな。だって、1aも1bもみんな脊髄に入ってるよ。その中にあるα細胞にに繋がるために入っくるのだから、わざわざ1bのみ『脊髄神経を介して』と、ことわる必要はないではないかなー。

単なる言葉のあやなのかな。相反神経反射と混同していないかのかな。これなら、『脊髄神経を介して』いる。この問題は「収縮しかしない筋肉がどうしたら伸びれるの」という疑問にもにつながるね。

第4図(図解生理学)

A:四頭筋(Q)の筋紡錘(AS)からの1a線維が、L6精髄レベルにおいて、四頭筋運動ニューロンに単シナプス性に連絡し、その側肢がおなじ脊髄部に存在する1a抑制性介在ニューロンに終わり、この介在ニューロンの軸索がL7レベルの二頭筋反腱様筋(BST)の運動ニューロンに対して抑制作用を及ぼす経路を示す。

第4図は相関神経支配をしめしている。これは膝蓋腱反射の例だけれど、膝のお皿の下の大腿四頭筋の腱をトンカチで軽く打つと、足が跳ね上がる。そのメカニズムの説明。たたかれて大腿四頭筋が収縮すると、同時に反対側の大腿二頭筋が緩まなければならない。そうしなければロックされた状態になってしまって、足がはねあがることはない。このような主動筋である大腿四頭筋と拮抗筋である大腿二頭筋の関係の図だよ。この関係が相関神経支配とか相反神経反射といわれるものだ。

これを神経の流れで見ると、大腿四頭筋の収縮により、その信号が1a神経よりL6脊髄に伝わり(求心)、L6脊髄ではその信号を受けて、一部を一つ下のL7脊髄に送り、その信号がL7脊髄のα線維(遠心)に伝達され、それが大腿二頭筋に伝えられることによって二頭筋がゆるむ。この例だと、信号が『脊髄神経を介して』というのも理解できる。

ついでにいっちゃうと、筋肉が伸びるのはこの仕組みなのです。反対の筋肉が縮んで、元の筋肉が伸びるのです。筋肉は自らは収縮しかしないのです。

でも、これは1aで起こることなので、1bでは起こらない。ここではそういう勘違いではないとして、先に進もう。これは蛇足だったね。

αに抑制命令を出すので、その筋肉を弛緩させようとします。

αに抑制命令をどうやって出すのかな。だって1bに信号が流れていれば、それはα細胞に届き、それによりα細胞が興奮するから、α線維にも信号が流れ、筋肉は緊張するのではないの。第2図にもどって、1bの流れをよく見てみると、あれ、1bとα細胞の間に何か挟まってるぞ。これなんだ。

そうか、こういうのを介在ニューロンというのか。介在ニューロンの中には抑制性ニューロンというのがあるのだな。抑制性ニューロンのほかには興奮性ニューロンというものもあるのか。なるほどねー。

第5図(図解生理学より)

抑制性シナプス(医学大事典・医歯薬出版(株)

シナプス前の興奮が伝達されるとシナプス後ニューロンの興奮伝達をおさえるように作用するシナプスをいう。シナプス後抑制とシナプス前抑制の二つの型がある。前者はシナプス後膜に直接に抑制伝達物質が作用し、抑制性シナプス後電位を生じてシナプス後ニューロンの活動電位の発生を抑えるものである。

後者は、抑制性ニューロンが興奮性ニューロンの軸索末端部にシナプスを作っていて、前者の活動の結果、興奮性ニューロンの活動時における軸索末端からの伝達物質の放出が減少、その結果、興奮伝導が抑制されるものをいう。

で、抑制の結果はどうなるのだ。神経細胞の中に二つの刺激が入ってから、aの刺激とbの刺激がお互いに相殺し合うのが後抑制、神経細胞に入る直前でカットしてしまうのが前抑制か。このいずれかで1aは抑制されているのだね。たぶん左から3番目のシナプス後抑制の方だろうな。

1bの反応は能動的収縮時に増加します。1aは1bより閾値が低いので興奮しやすいです。

この能動的という言葉、いつ聞いてもなじまないな。なんだっけ。そうか受動の反対だから「自分から働きかけること」か。そうすると、1bは筋肉が自分から縮んだ時に反応を増加させると言うことだな。自分で縮んだときには一番強い電流を流すということだな。それは前の図の下段左でも明らかだね。でも、それだけじゃないぞ。強く引き伸ばしても反応するぞ。でも、能動の反対「受動」ではどうなるのかな。

あれ、受動ということは「他人に縮められたり、引き伸ばされる」ということだよな。そうした場合は、反応が弱くなるのか。そんなこと無いのでは。腱紡錘はセンサーだよ。センサーが他人か自分か識別できるのかね。言葉に引っかかってると先に進まないけど、一応チェック。

第6図(図解生理学)

ゴルジ腱器官というのは腱紡錘の別名。第6図をよく見ると、筋肉が通常状態では腱紡錘は発射してない。伸びるか、縮むかしたときだけ発射しているね。そして、筋紡錘は伸びているときに発射して、筋肉が縮んだときには発射していない。そして、たぶん能動も受動でも、すなわち自分で縮もうが伸びようが、他人が縮ませようが伸ばそうが、発射(発火ともいわれているが)には関係ないと私は思う。

1aは1bより閾値が低い。筋紡錘の方が敏感に反応するということだね。要するに緊張感には筋紡錘の方がより感じやすくて、腱紡錘は鈍いということだな。

そりゃそうだ、たぶん1bが反応するというのは、急激に引き伸ばされたりして筋肉に限界以上の力が加わったとき、つまり予期しないときに転んだりしたときなどに反応する。そして靱帯や筋が切れてしまうのを防ぐためにあるのではないかな。いわば筋肉の安全装置だよ。だから、通常の状態では1aが働いて、微妙な筋のコントロールをしているのだから。1aの閾値が高ければそれはできないからね。

γは筋肉が収縮した時に錘内筋線維がたるんで錘外筋繊維との長さの差が検出できなくなり、筋紡錘の感度が低下することがないように錘内筋線維を収縮させますが、力は発生しません。

確かに、筋肉を縮める力はないが、これ重要だよ。これを無視しちゃいけない。しかし、先に進みたいので、これも後回し(1)とつながるね。

αには1aからの収縮(+)命令と1bからの弛緩(-)命令が同時に伝わり、その瞬間瞬間に命令の差し引きをして、その結果収縮命令が優勢であれば収縮し、弛緩命令が優勢であれば弛緩します。その程度は差し引きの結果の絶対値に応じます。

1bからの弛緩(-)命令」というのは、正確には抑制ニューロンを介した弛緩だな。もっとも「筋肉よ伸びろ」という命令はないから、ただ単に「緊張しろ」という命令を、おさえてチャラにしているにしかすぎないのだがね。

したがって、緊張している筋肉を弛緩させようとする場合、なるべく1aの反応が弱くて1bの反応が強くなるように筋肉を操作すると効果が大きいと予想できます。

これが、いまいちわからん。

1aの反応が弱い →筋紡錘を弱く反応させる? →筋を弱く引っ張る?(反応させなくするには筋肉を縮めりゃいいのだが?)

1bの反応が強い →腱紡錘を強く反応させる  →筋肉を強く引っ張るか緊張させる →抑制ニューロンでαは刺激されない

筋紡錘を反応させなくするには筋肉を収縮させればよい。その収縮状態で腱紡錘を反応させるには、・・・あーだめだ、イメージできない。もう少し先に進めば見えるのかな。

これらの知識を元に筋肉の反応を単純化して考えてみます。

まず、「他動的にゆっくり筋肉を伸ばした後、脱力」する操作では、以下のようになります。

なお、張力が1bの閾値以上の場合、ここでは即1b優勢として扱い、この結果を張弛として表示しています。実際には1aと1bとでどちらが優勢か判断しなければなりませんが、頂点まで伸長すればどこかで必ず1bが優勢になると仮定し単純化してあります。

張弛において収縮を「+」、弛緩を「−」として合計を算出しています。ただし、値は定性的な傾向をつかむための目安に過ぎません。

「他動的伸長と脱力の場合」

操作(1):均整法の筋肉操縦法の通り、ゆっくりと筋肉を伸ばしていき、伸ばし切った頂点でパッと脱力した場合では以下のようになります。

なるほど。動かしながら操作しているわけか。

操作(2):(1)と同様に頂点まで伸長し、途中までゆっくり脱力し、次いでパッと脱力した場合

操作(3):(1)と同様に頂点まで伸長し、最後までゆっくり脱力した場合

なるほどねー。よく考えたもんだね。

脱力過程において錘内筋繊維にγから収縮命令が伝わったとしても、錘外筋繊維には直接関係しないので上記の結果に影響はありません。

うーん、ここはどうかな。これも後回し(1)につながるね。

したがって、操作(2)と(3)が(1)よりも弛緩作用が強そうです。つまり、脱力過程の1bの閾値以上で得られる弛緩作用も利用できるということです。これが以前の発言で「パッと脱力」するよりも「ゆっくり脱力」した方が弛緩作用が強いのではないかと考えた理由です。

オかし、以上の操作には時間の概念が曖昧です。実際には受者の呼吸や整者の持久力などにより時間的制限があります。大抵は受者の呼吸で制限されると思います。そこで限られた時間内でなるべく1aの反応が弱くて1bの反応が強くなるように筋肉を操作するには、と考えると以下のようになります。

操作(4):(1)と同様に頂点まで伸長し、吸気の限界まで耐えて脱力した場合

ポイントは「吸気で耐えられるだけ耐えさせて」にありました。つまり、「頂点」すなわち「1aが最も反応せず、1bが最も強く反応している状態」をできるだけ長く維持させることです。操作(4)では適当に頂点を3つ並べてみました。均整法では呼吸が逆になると作用も逆になるので呼気に入る瞬間に「パッと脱力」するのだと思います。

また、筋肉の起始部と停止部に手を当てて引き伸ばすようにすることで、確実に腱器官に張力を加えることができます。これで生理学的レベルでの疑問が解決しました。

気になるのはポイントの与え方と合計だね。収縮と弛緩にポイントを与えて合計で出しているけれども、はたしてこれが筋肉の「ゆるみ」に繋がってゆくのかな。これも後で述べることにしよう。後回し(2)

しかし、1aや1bの反応は生体外での実験で得られている知識の様なので、実際の生体内で操作(4)の現象がどの程度起きているかは定かではありません。

そうなんだよ、除脳動物の筋肉を使って張力の実験そしているようなのだけれども、これって死体の筋肉のことだろう。生きているのとだいぶ違うのではないかな。

今、見直してみるとこれらの刺激法は皆、何らかの形で落差を利用しメリハリをつけています。それによって錯誤による中立点のズレをリセットして初期値にもどしているように思えるのです。

結果的には見事にビーバーさんの仰るとおりの操法になっているようです。

確かに中立点のリセットということをいったよ。その意味は「埋もれていた手技療法の統一原理2− 反射編(http://www.linkclub.or.jp/~jingyuu/aruji/touitu2.htm)」で述べてます。

ところで、1aは筋肉が伸びていく時の長さの変化とその速度に反応すると書きましたが、実際には長さに変化がなくても定常的に弱く反応しています。これを考慮しても上記の結果に殆ど影響はありません。

この1aの特徴を逆手に利用すると、1aは筋肉を伸ばさなければ反応しにくいと言えます。この定常的な反応を1a'と表わし、大雑把に+0.2(この値は文献より1aの脱分極の頻度から求めました)とし、その差が出るかもしれない操作について次に考えてみます。

等尺性収縮:能動的に収縮する筋肉に対し他動的に抵抗を加えてその筋長を変化させないようにした収縮

要するに、筋肉の長さを変えないように力を加えて収縮させるわけだ。受者に自ら筋肉を縮めさせて、整者がそれに抵抗を加えるということだね。「筋長を変化させないように」ということは受者の力と整者の力が同じでなければいけないともいえるね。力比べをイメージすればよいのかな。

操作(5):等尺性収縮をさせ頂点で耐えられるだけ耐えさせて、パッと脱力した場合

 

したがって、等尺性収縮を利用した場合(操作(5))の方が他動的伸長を利用した場合(操作(3))よりも弛緩作用が強くなります。

更に、1aは能動的に筋肉の長さを縮めている過程でもγにより感度低下を補償されていますが、等尺時よりは反応しにくくなるので、この性質を利用することを考えてます。

この時の1aを1a"、その値を+0.1とします。

等張性収縮:能動的に収縮する筋肉に対しその収縮力より弱い抵抗力を他動的に加えた状態で筋長が短くなる収縮

これは、筋肉を縮める力を一定にして長さを変えるわけだね。受者が力を入れて筋肉を縮めようとするのに対し、それよりも弱い力の抵抗を加える。力くらべでは負けているので、筋は縮む。操体法をイメージすれば良いね。

操作(6):等張性収縮をさせ頂点で耐えられるだけ耐えさせて、パッと脱力した場合

したがって、等張性収縮を利用した場合(操作(6))の方が等尺性収縮を利用した場合(操作(5))よりも弛緩作用が強くなります。ただし、操作(5)と(6)では1bの弛緩作用が、張力の頂点までのもって行き方、頂点の強さ、拮抗させる抵抗力の強さなどによって微妙に変化するので一概に言えません。

ここまで三通りの筋肉の収縮・伸長法について見てきましたが、単純に1bの神経終末を直接圧迫することで腱器官に直接張力を生じさせることができるので、1bの反応を起こさせるには有効と考えられます。

以上の結果から次のようなことが言えそうです。

弛緩作用について:
●なるべく1aの反応が弱くて1bの反応が強くなるように筋肉を操作すると効果が大きい。その傾向としては「腱器官の圧迫<他動的伸長<等尺性収縮<等張性収縮」だが、絶対的なものではない。

安全性について:
●他動的な伸長では整者が適切な張力を感知できなければ、受者は痛みを覚える。(張力が弱すぎると効かない)
●等尺性収縮や等張性収縮では受者自信が収縮の程度を痛みを感じない様に修正できれば比較的安全。
●等張性収縮では筋長が短くなりながら収縮するので、特に部分的に傷んでいる筋繊維があったとしても保護されやすい。

危険性について:
●等尺性収縮では強い収縮が得られるので高い血圧上昇が起こり得る。

受者の楽さ加減:
●他動的伸長では整者に体を預けているだけで良いので受者は楽である。
●等尺性収縮や等張性収縮では受者は能動的に参加しなければならないので比較的元気がないと不向き。

というわけで、取り敢えず筋肉操縦法についての当初疑問は解決し、一歩踏み込んで理解できたような気がするのですが、ビーバーさんは如何お考えでしょうか。

Goopon

うーん、先にも言ったように問題をいくつか感じている。まずひとつは筋肉に足し算や引き算は関係するのかな(後回し(2))。ふたつめは「筋紡錘を感じさせないように操作する」といってるけれど、おそらくそれは無理だよ。これは無視してしまったγ線維がからんでくる。後回し(1)の問題だよ。

まず、ひとつめの、筋肉の足し算や引き算の問題を片づけちゃおう。1bの抑制もからむ、この問題はα細胞の前と後で考えてみなければならないと思うな。α細胞の発火とそれ以前の問題だ。もう一度、整理すると、筋肉を緊張させるにはα線維に信号(電流)が流れなければならない。その為にはα細胞が発火しなければならないが、そのαの前と後では、少々事情が違ってくる。

第6図

先にαの発火後から考えるよ。その問題とは、筋肉の基本原則は、信号の有るか無いか、1、0しかない。1なら筋肉は縮むし、0なら縮まない。

『通常の随意運動にみられる骨格筋は、主にこの後者の形式による制御を受けている。骨格筋の筋線維は、どんな刺激に対しても、それが反応を起こすのに十分な強さのものである限り、刺激の強さに関わりなく最大の反応を示す。すなわち骨格筋線維は全か無いかの法則に従う反応を示す。(ブリタニカ百科事典)

『神経細胞を支配する「全か無かの法則」
 神経細胞の興奮は、非線形数学の世界でいうカオス的変曲点をもつ。興奮するかしないかである。生理学ではこれを「全か無かの法則」という。興奮性の情報が集積し、神経細胞の膜の電気的平衡がある一点を越すと、その神経細胞は一挙に興奮へと走る。この変曲点を興奮の閾値という。
 数百の1a繊維の興奮性伝導の総和がこの閾値を超すと、その神経細胞は興奮し、その支配筋に筋収縮を起こすような指令を発する。この筋収縮による足の跳ね上がりが、腱反射として捉えられる。
 一個の筋肉は、数十から数百の運動神経細胞(α運動ニューロン)で支配されている。健常者では、腱反射で興奮し発火する運動神経細胞は、その筋の全運動神経のおおよそ10〜20パーセントである。
(体の反射のふしぎ学)』

ということだから、どんなに1aや1bの反応が強かろうと、α細胞が一度発火してしまえば、その強さには関係なく、一律「1」で「信号がある」ということで収縮するのだから収縮させる強さの差にはならないよ。つまり発火した後では足し段や引き算は成り立たない。

だから、gooponさんのいう引き算が成立するのは、αの発火前の問題になると思う。しかし、ここにも問題があって、抑制ニューロン(1)の問題と抑制ニューロンとα細胞の間(2)の問題の二つがあると思う。

(1)の問題

そもそも抑制ニューロンとななんなのだ。

抑制性(化学)シナプス

抑制性化学シナプスは、興奮性化学シナプスと同様の変化を起こすが、化学伝達物質によって、後部膜に内向きの電流が流れて過分極を起こさせるために、興奮性が低下する。このような化学伝達物質を抑制性伝達物質といい、この時、後部膜にみられる過分極の電位変化を抑制性シナプス後電位(IPSP)という。この変化は、抑制伝達物質によって後部膜KプラスとClマイナスの透過性が高まり、Kプラスの平衡電位からClマイナス平衡の方へ傾き、過分極を起こしてくるものと考えられている。(図解生理学)

脱分極(過分極)

静止時の細胞は、細胞膜の内外に細胞内を負とする電位差を有している。すなわち細胞膜は分極しているといえる。種々の原因でこの細胞膜を通して、外向きに電流が流れると、分極が小さくなる。これを脱分極といい、興奮性膜では脱分極によりで膜電位が減少し、閾値(臨界膜電位)に達すると活動電位を生じる。(医学大事典)

よくわからんが、ニューロン(神経細胞)はその神経線維で、他の神経細胞と接続している。その接続部位はシナプス(神経接合)といっている。そして、ニューロン(神経細胞)の神経線維の先端部は小頭という玉ころになっている。これをシナプス小頭とかシナプスボタンといっている。そのボタンの部分は+か−の電化をおびている。−をおびたシナプス小頭を持つニューロンが抑制ニューロン。ああ、ややっこしー。

それで抑制ニューロンにつながると、1bの信号はどのように変化するかというと、これは二つ考えられる。一つは仮に100の値のものが、90ぐらい抑制されて10の値になってしまう場合。もう一つは完全に反転して、つまり+が−に転じて+100が−100となってしまう場合。私の持っている本では、このあたりがどうなっているのか書いていないので、推測するしかない。

まず抑制ニューロンが前者の性質を持っていれば、gooponさんの仮説はここで成り立たなくなる。なぜなら1bの信号が反転しないので、常に+の状態でいるからだ。1aを抑制するためには抑制ニューロンは−になっていなければいけないが、100が90抑制されて10残っている、その10は、小さくはあるが+である。したがって1aは+、1bも小さいけれど+になり、1bの働く結果はすべて緊張となる。これを操作1の表の数字でいうと、緊張が+1なら弛緩は−1ではなく、+0.1でわずかな緊張となる。こうなればgooponさんが表の中でいう抑制は起こらない。すると各表のすべてに弛緩が無くなり、すべてが緊張してしまうのだからgooponさんの仮説は成り立たなくなる。

仮説が成り立つには、この抑制ニューロンが後者、すなわち完全に信号を反転させた場合だけである。すなわち+1bを−1bとする場合である。この線で論を進めて行く。

(2)

ここで反転が起こるとしよう。すると今度は抑制シナプスとα細胞の間での問題になる。第6図の(2)部分だ。ここでは1aと1bでの電流の足し算や引き算が成立しそうな気がするが、そうすると考えられるのはα細胞を発火させないように「1bが完全に1aを抑制する」ということが問題になる。だが、ここでもgoopon説は成り立たなくなる。

1aが、仮に−1で抑制されるならば、筋肉を強く引いて1bに流れる電流を高めて-2、-3・・・にしても、すでに-1でα細胞は抑制されているのだから、抑制を強めたところで何をしようとα細胞は発火しない。筋肉は「全か無かの法則」にしたがうからだよ。α細胞の閾値に−1で閾値に達しなかったのだから-2、-3・・・となれば、さらに達しない。収縮させるための信号はよけい来ないことになるだけだしたがって、操作2〜6の操作はすべて成り立たなくなる。

というわけで、gooponさんの仮説はすべての面で否定されてしまった。でも、この結論は読んでいる人には簡単に見えるかもしれないが、ここに達するには容易ではなかったよ。実は昨日、これを書いた時点では、否定ではなくgooponさんの仮説を肯定して書いていた。その前は否定、その前は肯定、2転どころか4転、5転しているのだ。引っかかっていたのは、「1bは・・・その筋肉のαに抑制命令を出すので、その筋肉を弛緩させようとします。」という言葉だった。

どの解剖や生理学の本を読んでも同じように書いてある。やはり正しいのかなと思ってしまった。そこで先のように分解したわけだが、そこで筋肉というのはアナログ信号で変化するのではなく、デジタルで変化することに気づいたのだ。気づけば簡単だった。言葉が問題なのだ。-2、-3・・・と張力と増加させてゆくと、つい、それにつれて抑制力も増加するように思ってしまう。『αに抑制命令』はアナログでだされているわけではなくデジタルなのである。だから、αには1aからの収縮(+)命令と1bからの弛緩(-)命令が同時に伝わり、その瞬間瞬間に命令の差し引きをして、その結果収縮命令が優勢であれば収縮し、弛緩命令が優勢であれば弛緩します。の計算もデジタルの計算ととらえるべきだったのだ。

 

筋紡錘の秘密

すでに、gooponさんの仮説が成り立たないことを立証したのだから、ここで追求をうち切るべきかもしれない。また、多くの人達には私達が机上の空論をもてあそんでいるように見えるかもしれない。しかし、私はまだこの追求を続けるつもりでいるのだ。それは、gooponさんの仮説の完膚無きまでにうち破るためではない。ここから新しい花を咲かせるつもりだから。

話を少し飛ばすが、亀井先生が説いた講義の中には、講義をまとめる際の編集のずさんさから、多くの謎の部分がある。これから述べる「筋紡錘」についての講義は、おそらく謎の中でも最大のものだ。

筋肉は通常、起始部と停止部とがあって、その中間に筋腹があるのであるが、これには横の線維と縦の線維とがあって、筋肉が収縮するという事は、これらが膨脹するのである。つまり横縞の線維が横にスリップしてはみ出して、あたかも収縮したかのように見えて感じられるのである。これが俗にいわれている収縮したという状態なのである。

縦の線維である筋紡錘は何のためにあるのかというと、一種の反射線維の役を務め、物を伝達するという作用がある。つまり筋紡錘が刺激を受けると膨脹する、といっても、このまま膨脹する事は出来ないから縮まる。膨脹する事と縮まる事の二つで筋肉は収縮するのである。スリップする事と膨脹するという事は同じような意義に思われるがこれは違う。筋紡錘というのは伸ばしたときにのみ脳とか運動の求心刺激になって伝わっていくのである。だから筋紡錘が伸びるという事は、その興奮が中枢に向って伝達されなければならない作用を必要としたときにのみ膨張するのである。横縞の線維が横にスリップするのとはその性質は違うのである。

筋紡錘の膨脹は脳を非常に覚醒する作用がある。筋紡錘が正常になってサーッと伸びきったときには反応を全く起こさない。これ等は筋肉の生理であるからよく理解しておかないと調整上に於て困る。では病気を診るときにどう診るのかというと縞模様になっているスリップしている線維等を調べてみても意味がないのである。

関節が異常を起こしたり、動かなくなったりしたときには横にスリップする線維ではないのである。縦の筋紡錘なのだ。この原理が分からないのではいくら調整を加えても治らない。この原理がよく理解されていると関節等の動かなくなったものの調整は非常にやり易い。

筋紡錘を調べるときは横に弾いて調べる。指の皮膚の感覚が鋭敏な人は軽く横に弾いているとその緊張に触れるのがよくわかる。この緊張は全線維がするのではなくて一部の筋紡錘線維が緊張するのである。つまり横の縞模様の線維は大なり小なり全体が横にスリップしておるが、筋紡錘の場合は力の入用量とかあるいは刺激の伝達の一つの方法として種々雑多に緊張する本数が違うのである。それによっていろいろの事が生じるという性質があるのである。

筋紡錘は伸びきっているときは何の作用もしていない。動かしたときも同様である。瞬間にパッと伸ばす。このパッと伸ばす瞬間の刺激だけに応じる作用があるのである。あるいは又グウーッと引っぱって伸ばしておいてパッとショックを加えると応じる作用がある。即ち伸反射である。筋紡錘というのは屈筋側より伸筋側の方に多く発達している。・・・(機関誌26号「刺激の基礎原理」)』 

読んで分かりますか。均整法の難解な文章中、これほどむちゃくちゃで理解に苦しむ文章はないのです。これは亀井先生の話の仕方があっち飛びこっち飛びして、また最初に戻る、という編集者泣かせのものである上に、われわれのような編集者も素人、文章感覚あまりないうえ、医学知識にも精通しているわけではない。私も含めて、均整師というものは自慢じゃないが、頭を使って食っているのではない。手を使っているのだから、理論的知識については弱い。つまり医学の知識のあまりない人たちが、「筋紡錘」というこれまた難解の問題をまとめようとするのだから、まとめる際にポイントをはずしてしまったのではないかと思う。でも、ご心配なく、これから私が説明するところを読めば、この断片的な記述の意味がかなり分かってくるはずです。そのきっかけとなったのがgooponさんの仮説なのです。

gooponさんは、なぜ緊張し傾斜を起こす筋肉が緩むのかについて、おそらく均整師では誰もやったことのない方法で、その謎に挑んだのだ。しかし、その理論立てには誤りがありそうにみえる。なぜ誤ったのか、その原因を別の角度でみてみると、以外や以外、今まで最大の謎とされるのが、解けてしまった。これには、とりくんだ私がびっくりした。

誤りその1: ミッシングリンク

今一度、私の反論が間違っていて、gooponさんの仮説が正しかったとする。それでも、この説には難点がある。それは、すべてがgooponさんの言うとおりだったとして、つまり、1aを抑制するために、「(操作6)が弛緩作用が一番強い」というのが、仮に正しくても、操作をやめてしまえば元のもくあみになる。

どういうことかというと、仮に筋肉に凝りがあって、いくらかの緊張があるとする。まあ、それを10としようか、つまり1aからは10という緊張のレベルがαに発せられている。その状態で、−80とか−90とかに引っ張るわけだ。では、その引っ張る力を元の0にもどしたら、1aと1bの直接的な関係が無いので(二次的にはありそうだが)、引き算が成立しそうにない。だから、0に戻したら、元あった10の緊張がまたあらわれて、筋肉は緊張したままとなる。1aと1bの関係からでは、1aの緊張を解くためのメカニズムが存在しないのだ。だから、筋肉が緩むことにはならない。

とは言え、筋肉操縦で使うテクニックの一つの筋肉を引き伸ばす方法で現実に緩んでいることも確かだ。では、何が筋肉を緩ませているのか。確かに筋肉を引けば、その時点で緊張は無くなる。でも、やめればまた元に戻る。緩むためのメカニズムというか、その関係というものの説明がない。1aの発火に影響を与える何かがあるはずだ。それは、1aと1bの関係だけでは筋肉の弛緩の原理を理論化しようとしても、この二つの関係だけでは無理があるのだ。1aと1bをつなぐ何かが必要になる。 ちょうど類人猿と人間との中間にあったと仮想される動物の失われた環鎖(ミッシングリンク)のようなものが。

gooponさんはなぜこの二つの関係に絞ったかというと、他の神経に手を広げれば、関係は幾何級数的(古いね)、要するにどんどん関係が複雑化し、情報処理が複雑化しすぎて、とても手に負えなくなるから、この二つの関係に絞ったのだと私は思うよ。だから複雑な問題の絡むγをわざとはずしたのだ。問題はここにある。そしてこれは後回し(1)の問題でもある。

誤りその2:γを無視するな

筋肉を収縮させるαに行く信号は1aや1b以外にもある。下の図を見て欲しい。大変な数の神経が筋肉には入ったり出たりしている。

第7図

2.筋紡鐘の神経支配(図解生理学より)

骨格筋から脊髄へ上行する感覚神経線維には、1a(group 1a fiber),1b(group 1b fiber)、2(group2fiber)、3(group3fiber)および4群線維(group4fiber)の5群がある。laおよびlb群線維はAα線維に、2群線維はAβおよびAγ線維に、3群線はAδ線維に、4群線維はC線維に相当する。この分類は筋感覚神経に限つて用いられている。なお、骨格筋の伸展や収縮の状態、比覚、振動の感覚、痛覚などを中枢に伝えるのはこれらの神経によって行われている。

上記の文書は筋肉から出ていく神経、つまりアウトプットする神経について述べたものである。インプットは述べられていない。そこで入力と出力を図にすると次のようになる。

 

第8図

すごいね、たった一本の筋線維にこれだけの情報が出入りしている。しかも、まだ群の繊維は省略しているのだ。この中でもっとも注目に値するのがγの働きなのだよ。そこでγ線維(錘内筋線維・筋紡錘)とは何かということになる。

これが、わかりにくい概念なのだけれど、すばらしい説明がインターネットの中にあったので引用させてもらった。以下の説明は足川さんという理学療法師の方のホームページより転載。筋紡錘の機能解剖の考察なのだけれど、実に分かりやすい。権威を取っ払うと分かりやすくなるという好例のような気がする。私が解説するよりわかりやすいので使わせてもらった。皆さんも是非一度は訪れるべきです(http://homepage.mac.com/kazz2000/ref/reflex.html)。ホームはhttp://homepage.mac.com/kazz2000/。しかし、私も恥ずかしい。筋肉を毎日調整しているのに、こういう見落としをしていたとは。世の中広い、そしてインターネットてとんでもないところだとつくづく思うな。あ、これは余談だね。

γというのは錘内筋線維を収縮させる働きがある。これがポイント。 


 ・・・筋紡錘は、たくさんある筋線維の中に部分的に存在するので、筋が伸ばされたときには仕方なく一緒に筋紡錘も伸ばされますが、α運動ニューロンによって筋が縮むときは、上図のように筋紡錘はたるんでしまうわけです。それではヤバイです。

 それでは、この危険をどう避ければよいか・・・、それがこの筋を短いまま一定に保つ(筋紡錘の感度調節機構)なわけです。解決法は、筋が短縮域でも筋紡錘が張力を受けることが出来ればよいわけです。・・・といってもどうすればよいか。ウ〜ン  と悩んだあげく筋紡錘を収縮させるわけですね。何故か? またもや図を用いて説明します。

ここで新しく γと言うのがでてきました。これは、γ運動ニューロンといって、働きはα運動ニューロンととてもよく似ています。α運動ニューロンが筋(錘外筋)を縮ませるのに対し、γ運動ニューロンは筋紡錘(錘内筋)を縮ませるわけです。何度もくどく言いますが、αやらγやら1a,1bなどというものは、基本的に一つの働きしかしません。

 文献を読んでみると、“γ運動ニューロンは、筋紡錘の感度を調節するために働く。”といったことが書いてありますが、おおげさ・紛らわしいこと甚だしく、ジャロに電話しなければなりません。

 γ運動ニューロンというものは、筋紡錘を収縮させることしかしません。その結果、筋紡錘が感じやすくなるのです。(γ運動ニューロンは、感度がよくなる方向にしか働きません。感度を落としはしないのです。それを調節と言うなんて、ちょっと傲慢ですね


ぶっちゃけた話、生理学やら解剖学の本を読んで、今一理解できないことが、この図でやっと意味が分かったのだ。それまでは筋紡錘は単なる張力のセンサーの機能としかとらえていなかった。何で筋紡錘が自ら縮まなければならないのか理解できなかった。それは、上の図で「感度じやすく」しているのだと分かった。まだ、理解できない人がいるかもしれないから、次の例で説明しよう。

たとえば図のように180度の可動域がある関節が90度に曲がることを考えてみる。

第9図

第一段階

γ細胞とα細胞に上位の、この場合は脳だけれども、そこから90度に曲げろと言う指令がくる。この指令は、戻って第8図を見てもらえばわかるが、錐体路からも錐体外路からもくる。さらにごていねいに、α線にとγ線維の二つがあり、合計4本の線維を通じて指令が脊髄に到達するわけだ。

脊髄では錐体路からきたα線維の指令と錐体外路からきたα線維の指令をα神経細胞で受けて、錐体路と錐体外路のγ線維の指令はγ神経細胞で受ける。

90度という位置は、筋肉にはわからないから、とりあえず曲がる方向に緊張するわけだ。

第二段階

その時、筋紡錘(錐内筋線維)も腱紡錘(錐外筋線維)も一緒に縮むわけだが、どこまで縮むかは筋肉には判断できない。そこで筋肉はどんどん縮んでゆく。すると、ある時点まで、この場合90度だけれど、その時点で筋紡錘(錐内線維)は、先行して縮むのをやめてしまう。γの影響だ。

第三段階

その結果、筋紡錘よりなお筋肉は縮もうとすると、筋紡錘はそれを受けてたるみすぎてしまう。そこで発火をやめてしまう。するとα細胞へ行くaの中の電流が0になって、筋肉を縮めようとする力が存在しなくなる。そこで筋肉は縮むのをやめて、90度の位置にとどまることになる。

どうです。なんと巧妙な回路。自然は素晴らしい。ブラボーと思った。しかし何だよ明智君。これには落とし穴があった。

さっき筋肉は縮むしかない。有るか無いかの法則に従うと言った。とすると、筋紡錘もデジタルで縮むわけだから、「この場合90度だけれど、その時点で筋紡錘(錐内線維)は、先行して縮むのをやめてしまう。γの影響だ。」なんて分かったように書いたけれど、これは起こらない。筋紡錘がアナログで、たとえば5ボルト(こんなに高くないが)で50パーセント、6ボルトだと60パーセント縮むということはない。デジタルなのだから、筋紡錘だって縮むか縮まないかだ。

うーん、また悩んでしまった。本当にこの問題を考えるときは、この連続なのだ。やっと解けたと思ったら、思考の過程に落とし穴があって、一つ後戻りしてしまう。

そこでまた、足川さんにご登場ねがいます


3)どんどん縮ませる(持続的収縮)

じれったいのではやく説明してしまいたいのですが、その前に一つ質問をします。今までの話を踏まえて、運動(筋収縮)をするためには、何がどうなればよいでしょうか・・・? 答えは、“α運動ニューロンが発火する(信号を送る)”です。というよりはむしろ、α運動ニューロンが働くことなしには筋収縮は出来ないと言った方がよいのかもしれません。ま・、どちらにしろα運動ニューロンが働けばよいわけです。冷静に考えればかんたんでしょ・・・α運動ニューロンは筋を収縮させるというたった一つの仕事しかしないのだから・・・(クドイ?)。

ここで、基礎理解のところで出てきた錐体路・錐体外路が登場します。といっても逃げ腰にならないで下さい、簡単です。錐体路・錐体外路が、運動を行うための脳からの信号の経路だということは前にも説明しましたが、そのどちらも、行き着く先は脊髄前角にあるα細胞(α運動ニューロンの細胞)です。つまり筋を収縮させるのです。しかし錐体外路においては、おなじく脊髄前角にあるγ細胞にも信号を送ります。(下図のように)

錐体外路において、なぜγ細胞にも信号を送らなければならないのか疑問に思いませんか?。筋収縮をするならα細胞にだけ信号を送ればいいのに・・・たしか、γ運動ニューロンって筋紡錘を収縮させるモノですよね。・・・実は、筋活動を滑らかにするためにγ細胞にも信号を送っているのです。と言っても解らないと思うので、毎度のように図を用いて説明したいと思います。

γ運動ニューロンが働くと、筋紡錘が収縮しようとしますが、その前に筋紡錘に張力が働きます。長さは変わらないのに自分だけ縮まろうとしたバツですね。そうするとどうなるか?早く次ページへ・・・。

カンがいい人はもう解るでしょう(・・・解らない人のカンがが悪いのかな・)。では、下図。・・・友達なくしますね・・・。

ウーンなんか前にもやったことがあるような・・・。筋紡錘の伸張刺激・1a・α・筋収・・・。そうです!!!(?)伸張反射です。しかし、ここで伸張反射が起こると何かトクをするのだろうか・・・ハイします。

 持続的収縮は随意的(つまり意識下ってコト)に行われています。ってことは、運動を起こそうと思っている間ずっと錐体路・錐体外路には信号が流れているわけですね。そうすると、α運動ニューロンはもちろんγ運動ニューロンにも常に信号が送られているわけです。すると・・・。

これもどこかで見たことありますね。2)筋を短いまま一定に保つのところです。

さて、上図の右の状態からγ細胞に信号が来たらどうなりますか・・・?もうわかるでしょう・・・わからなかったら、前ページの下の図から見直して下さい。γが働けば働くほど、筋はどんどん収縮(短縮)していくわけです。錐体外路においてγ細胞に信号を送るのもすてたものじゃないでしょう。というより必要ですね。人間が運動を行うときまずγ細胞への信号が高まります。そうすると、後からα運動ニューロンが筋収縮をさせる際にたすかる(筋収縮を円滑に行える)というわけです。

もう一度錐体路・錐体外路の経路をまとめておきます。

結局αが働けば筋収縮するわけです・・・わかった?


なるほどねー、そうすると、一気に90度まで筋肉が縮むわけではなく、γが先行して、縮み、つまり、γで1度(角度だよ)筋紡錘が縮む、すると「イテテ」というわけでαで筋肉が一度縮む。その時点ではγはもう発射はしない。だからそこで筋肉は曲げるのをやめる。でも、まだ曲がっていないよと大脳が感じると、そこでγに刺激を送り、それで筋紡錘が2度の位置まで縮む。次にαがイテテで発火、それによって筋肉が2度、まだダメというわけで、次にγで3度・・・・というわけで、90度まで進んで、この時点で脳の指令により「もういいよ」というわけでγが発火をやめれば、そこで、1aの発火も終わり、90度で腕は曲がるのをやめる。ということが考えられる。

まるでコンピュータだよ。コンピュータがかけ算するときは、足し算を繰り返しを高速でやるのだ。例えば、2×5は2を5回たして、レジスターが5を計測したら「やめ」といい、サブルーチンからメインルーチンに戻ることをする。

第10図

というそれを同じだ。これを高速でやっているのだね。たぶん、ペンティアム100(4じゃないよ)の10,000ギガヘルツぐらいのスピードで。

なんでだろう。変かもしれないがスピードの為だと思う。シュワルツネッガーのターミネターの腕の肉をはぐと、シリンダの伸び縮みで腕が曲がったり伸びたりしていた。たぶん油圧で動くのだと思うが、その油をモータで出し入れすることを考えると、あまり早くは動けない。本田とかSONYでロボットを作ったけど、モーターでは人間のように素早い動きはできない。これと比べれば、ただ縮むだけしかしない筋肉の方が瞬間の動作などの動きを作り出しやすいのではないかと思うね。

機動戦士ガンダムの中でアムロは巨大ロボットのようなモビルスーツ(ロボット型戦車)を着て(乗って)活躍する。アムロは旧人類とは違った新人類である。宇宙ステーションに生まれ育った環境が彼を変えた。反射神経が旧人より良いのである。だから彼が乗るガンダムは強い、という設定だった。でも、これは無理だね。なぜならサーボモーターで動くガンダムは、どんなに早く動いても人間の筋肉のような動きは再現できない。反射神経のスピードには追いつけないのだから。

人間の筋肉は「収縮」しかしない。この機構によって鞭のように動くのだ。だから素早い動きができる。あっ、鞭という言葉でひらめいたぞ。さっき、第1段階〜第3段階で、一気に90度までいって、ストップはかけられないと書いてはみたけど、それも可能かもしれない。なぜなら、振り下ろした鞭を止めるときは手首のスナップを利かせて、反対方向にブレーキをかける。そこで「ビッシ」となるわけだ。筋肉でこれをやるためには拮抗筋がγで働けば良いのだから、第一の説もまだ有効だね。いずれにせよ45億年前に生まれた地球が、35億年かけて「動く」ことを進化させ続けた成果がここにあるのだ(おおげさかなー)。鞭のような鞭毛の動きが筋肉へと進化したのかなー。

あたっているかどうかは知らないよ。何しろ、ここまでくると基礎的な解剖学や生理学の本には何も書かれてない。というよりも学者さんたちは考えたことあるのかも疑わしい。亀井先生は「運動系の研究がない」と嘆かれたが、25年後の今もあんまり変わってないのかもしれない。これを本格的に調べるためには生物学と情報工学と物理工学の化学ドッキングというか、共同研究が必要だね。もうどっかでやってるだろうけれど。

瞬間的なスピードの速い動作にブレーキをかける方法はもう一つある。そこで1bなのだ。これも足川さんに任せちゃいましょう。


5)ブレーキをかける(同筋の抑制性二シナプス反射)

 何のことか解らないと思います。要するに、筋が収縮しすぎないように同筋のα細胞に抑制的に働く経路があるわけです。自ら筋を収縮させるわけですが、あまりにも強い収縮は自身を断裂しかねません。そこで、自分(α細胞)にブレーキをしつつ自分(α細胞)を働かせるわけです。うまく調節しているわけですね。

 ここで登場するのが、“腱紡錘”と“1b線維”です。筋紡錘には1a線維が着いていましたが、腱紡錘には1b線維が着いています。基本的にはこのふたつは似ているのですが、ちょっと違うところがあります。両者とも張力を感じたらそれぞれ1a・1bが発火するのですが、腱紡錘は筋が伸張されたときも収縮したときも働くのです。筋紡錘は筋が伸張されたときにしか働きませんでしたね(随意的筋収縮においてはγによって筋紡錘が収縮するから1aも発火できるのですが・・・)。では、なぜ筋が伸張されたときも収縮したときも1bは発火できるのでしょうか?。それは、腱紡錘が筋に対して直列に着いているからだとされています。そうすれば、収縮に対しても伸張に対しても張力を感じることが出来るわけです。解らないと思うので、下図。

イメージできますか? 骨付着部と骨付着部を引き離す(筋にとっては伸張される)ときは筋紡錘にも腱紡錘にも張力が加わるでしょう(エキスパンダーのバネのように)次に、筋が収縮したときはどうでしょう? 下図。

筋が収縮(同時に骨付着部は接近)しても腱紡錘には張力が加わるでしょう(筋紡錘はたるむけど)。こうやって筋が収縮したときも、伸張されたときも腱紡錘は張力を感じて1bは発火できるわけです。

1bは発火したら、脊髄まで行ってニューロンを一つ介して同筋につながるα細胞に信号を送ります。この間に挟んだニューロンはα細胞に抑制的に働くわけです。説明し忘れましたが、腱紡錘はもちろん腱の中に存在します。


gooponさんは1aと1bで考えていたけれど、1bは強く引かれるか縮むかしなければ反応しないようだから、1bは通常の筋肉の活動範囲内ではあまり働かないのだ。その状態で働くのはむしろ1aなのだ。やはり筋肉の緊張に関係するのは主体は1aだよ。そして注目すべきは筋紡錘とγループの働きなのだ。筋肉の緊張を巡る長い長い旅もそろそろ終わり近づいてきた。そろそろまとめにかかろう。

γ運動線維 (筋紡錘運動線維)

骨格筋の長さを受容する骨格筋の感度を調節する神経繊維。この線維を遠心性に走る信号が、筋紡錘に達し、筋紡錘の中に存在する収縮性の構成成分を収縮させるために、筋紡錘の感度が上がると考えられている。筋紡錘が筋の長さを受容するに際して、長さの時間的変化(伸張速度)に対する感度と、長さそのものに対する感度が問題になるが、γ運動線維にはγ1とγ2の2種があり、γ1が伸張速度に、γ2が長さの感度上昇に関与するといわれている。

γ系

γ運動線維の活動は、筋長受容器(筋紡錘)の感度を調節することによって、筋収縮の強さに反映する。したがって、運動に関しては、筋にインパルスを送り込むα運動ニューロンのみでなく、γ運動ニューロンの活動が重要な意義を持つ。γ運動ニューロンを駆動する系をγ系という。

γ−調節

 脊髄の前角には、骨格筋を支配する運動ニューロン(αニューロン)のほかに、やや小型のニューロン(γニューロン)があって、それから出た神経線維(Aγ線維)はαニューロンの神経線維(Aα線維)と一緒に走って筋に至る。
 γニューロンの役目は筋紡錘の中の筋線維(錘内筋線維)を様々な程度に収縮させて、伸展刺激に対する感度を調節することにある。これをγ調節という。
 伸展刺激が弱いときでも、錘内筋線維が収縮した状態で作用すると、あたかも伸展刺激が強まったかのように筋紡錘の感覚神経(1a群線維)にインパルスが増加し、これがαニューロンに伝えられるので伸張反射が強くおこってくる。これはγ調節の一例である。
 上位脳からの下行性指令によって筋収縮の程度を加減しようとするとき、指令はまずγニューロンに作用し、二次的にαニューロンの活動が変化するという事例も知られている。

γ環(γループ)

γ運動線維の活動は、筋長受容器(筋紡錘)の感度を上げる。筋紡錘から生じた信号は、中枢神経系に向かい、運動ニューロンに入力を与える。運動ニューロンの出力は、筋収縮を引き起こし、筋紡錘は筋線維の中に混在するので、力学的に影響を受ける。このように、中枢神経系と筋との間には求心性経路および遠心性経路のループがあり、この経路を通る信号が、筋の張力を調節する。この調整にγ運動線維の活動が関与しているのでγ環(γループ)とよばれる。

γ硬直=γ個縮

中枢神経系に何らかの原因があって、γ運動ニューロン(γ系)の入力が増大すると、骨格筋の長さの受容器である筋紡錘の感度が高まる。このことにより、骨格筋にわずかの伸張を与えたときに多大の張力が生ずる状態となり、関節はきわめて動かしにくくなる。この状態をγ個縮とよび、伸筋系に生ずるのが通常である。(医学大事典)

 

言葉で理解するより図みる方が早い

第11図

これがγループといわれる回路だ。筋肉の運動には常にこのγが先行して起こっている。

最初の指令(第1段階)は脳からγ細胞に届き、それが筋紡錘を収縮させ、収縮された筋紡錘は感度を上げて筋肉の状態を知り、緊張が必要ならば1aに信号を流し、それがα細胞を興奮させ、筋肉の収縮を起こさせる。

筋が収縮すると、その信号はこんどはγをはずし、直接筋紡錘に達する。そこから第2段階の始まりとなって循環が起こる。

その循環は必要が無くなるまで何度も続けられることになる。新たな必要が生まれると大脳からγへの刺激が再び起こり、筋肉を新たなステージへと導いて行くことになる。これが、前にコメント(手技療法の原理)では説明することのできなかった筋肉のフィードバックループだ。

このようにみてみると、筋紡錘はブリタニカ百科事典で述べられている単なるストレイン・ゲージ(ひずみ計)の張力検出素子ではなく、起動スイッチであり、監視モニターであり、司令塔の役目もしている。さらに興味深いことは、このγ細胞への指令は、脳の運動野4、6、小脳、大脳基底核、脳幹毛様体などの主要な中枢から起こっていいることである。

第12図

かって手技療法の巨星である野口先生と亀井先生は筋肉に異常な緊張を起こさせている原因を錐体外路の問題として求めようとした。野口先生はそれを潜在意識の問題としてとらえ、亀井先生は反射の異常としてとらえようとした。

その錐体外路の刺激はγ細胞を伝えられているのである。潜在意識の座を脳に強いて求めれば、それは大脳の古皮質ということになるが、このγを刺激する脳の座には、古皮質層からの発火もあるかもしれない。また、フィードバックの異常として求めようとした亀井先生にはγループという回答が与えられるのではなかろうか。

以上のことから傾斜圧の生み出しているのは、このγの回路なのだと思う。亀井先生はこれを説明しようとしていたのではなかろうか。ここまで読まれたら、もう一度、戻って亀井先生の筋紡錘の説明を見直して欲しい。・・・・・全部は分からないとしても、何となく、伝えたかったことの雰囲気は分かってきませんか。

では病気を診るときに・・・関節が異常を起こしたり、動かなくなったりしたときには・・・筋紡錘なのだ。この原理がよく理解されていると関節等の動かなくなったものの調整は非常にやり易い。この原理が分からないのではいくら調整を加えても治らない。(機関誌26号「刺激の基礎原理」)』どうです。

さっき、治療を受けていった方が、整形外科で牽引したらしびれが出てきたと訴えていた。今までのの考察から、牽引療法を考えてみる。gooponさんの理屈から行けば、つまり1aを抑制するには1bの牽引を強めれば良いという結論になるけれど、そうすれば最良の治療法は牽引療法ということになる。でも、すでに述べてきたとおり、1aは1bでは抑制されない。何らかの形で筋紡錘に刺激を与えて、γを通じて、すでにあるフィードバックのループに変化が起こったときにのみ変化するのだ。

しかし、牽引療法では時として、やり方が悪いと、筋紡錘に刺激が行かないばかりが、よけい筋紡錘を興奮させて、筋肉をよけいに緊張させ悪化することにもなりかねない。われわれが傾斜圧を緩解するターゲットにすべきものは、この筋紡錘とγループなのだ。「手技の統一原理その2−反射編−」の中で述べた「錯誤によって生じる中立点のズレ」はこのγループで起こっているのだと思う。この問題こそ、亀井先生が晩年、追求しようとして果たせなかった悲願を果たす鍵なのだ。

2001.5.15(火)


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