
現在、東京都三鷹市深大寺の神代植物公園の一角にわずかに残っている武蔵野おもかげです。昔は、この付近にもこのような雑木林が一面にありましたが、畑や宅地にされて、ほとんどがなくなってしまいました。そのため植物園では、かっての武蔵野の姿を残すべく、人の手を加えず、植物の茂にまかせて、自然のままに保護しています。
国木田独歩が歩いていた頃の『武蔵野』は目黒、渋谷、早稲田といった山手線のあたりでした。しかし、現在、その姿を探すとしたら、中央線では高尾より先にゆかなければ見られなくなりました。思えばすさまじいばかりの宅地化です。
手塚治虫は昭和28年に失われゆく武蔵野をテーマにして、鉄腕アトム『赤いネコの巻』(5月〜11月号『少年』)を書いています。都市化の中で破壊されてゆく武蔵野を追われた動物たちが人間に反乱するという物語でした。自然と人間の協調をあの当時から考えていたとは、その先見性に驚くばかりですが、わたしたちは未だにその答えを見いだしてはいません。
かく言う私もその都市化の恩恵にあずかり三鷹に住んでいるのですから、武蔵野を破壊した片棒の一端をかついでいます。便利さ、快適さを求めることは、自然を破壊してゆくことにつながります。自然と共存しつつ暮らしていけたらとつくづく思うのですが、人類が21世紀にその答えを見いだせることを願って止みません。 (尋牛均整院 深沢 功)